林真理子さんの著作「小説 8050」を読みました。紹介文には「従順な妻と優秀な娘にめぐまれ、完璧な人生を送っているように見える大澤正樹には秘密がある。有名中学に合格し、医師を目指していたはずの長男の翔太が、七年間も部屋に引きこもったままなのだ。夜中に家中を徘徊する黒い影。次は、窓ガラスでなく自分が壊される――。「引きこもり100万人時代」に必読の絶望と再生の物語。」とあります。(出典 Amazonより)
「小説 8050」には「機能不全家族」「ひきこもり」「いじめ」と取り上げられているテーマがいくつかありますが、読み進めるうちに私はその中で「いじめ」について考えるようになりました。
というのも、翔太がひきこもりになるきっかけとなる同級生からのいじめのひとつに酷似したいじめの現場を見せられた時のことを思い出したからです。小学校中学年の頃の記憶です。いじめる人も見せられた人も数人いましたが、いじめられていた人の姿しか思い出せません。かなり衝撃を受けたことは憶えていますが、その時どんな気持ちだったかなどは記憶にはなく、以後ほとんど思い出すこともなく私の記憶の奥にしまわれていました。
いじめやハラスメントは、時には人の命を奪ってしまう行為です。被害者の精神的、肉体的苦痛ははかり知れません。人生そのものを変えられてしまうかもしれません。しかし、加害者が罪に問われることはほとんどないのが現状です。「小説8050」では、翔太が7年前に受けたいじめ加害者に裁判を起こします。いじめられている翔太の画像を送られた人が翔太の裁判で証人になります。
現代と昔のいじめの違うことの一つが、現代がネット社会になったことです。昔はいじめを見せられるのはその場にいる人に限られますが、今はネットで画像や動画が流出すると、いじめを見せられる人の数が増えてしまいます。いじめの被害者にとって、いじめを見ていて何もしてくれなかった人もいじめている人と映っていたかもしれません。いじめやハラスメントは残酷です。
加害者の利益
おとなになってもいじめやハラスメントをする人とはどういう人でしょうか。加害者がいじめやハラスメント繰り返してやめられないのは利益があるからですが、何を得ているのでしょうか。
・危害を加えた相手の反応を見て楽しむ。
・自分が相手より偉くなったような錯覚から、勝ち誇ったような気分になれる。
・脳内でドーパミンが放出される為、一時の快感が得られる。。
・気に入らない相手に八つ当たりして、憂さ晴らしをする。
・相手の幸せが許せないのでつぶそうとする。
・思い通りにしたいという支配欲が満たされる。
・手っ取り早く一時の快楽が得て、自分の不快さから逃避をする。
・自分の力を超えて相手を支配できたような気持ちよさを得る。
・相手が自分の為に存在するかのように錯覚する。
・退屈しのぎをする。
・いじめを見せつけることで周囲の人に力を誇示できる。
などでしょうか。
やっていることの善悪はわかっているのかもしれませんが、相手の気持ちを想像しにくいもしくは想像できません。
もちろん人望もなく、いじめやハラスメントをしないと生きていけない哀れな人たちです。
加害者の人となり
温厚な人であったり、善良で穏やかな人、反論したり仕返ししない人などをいじめのターゲットにします。もちろん被害者に問題があるわけではありません。人格的に劣っていて問題があるのはいじめるやハラスメントの加害者です。加害者の基準で勝手に弱いと思っているだけです。
通常は人間関係で何か起こった時に、自分に非があったのではないかと原因を自分の中に探そうとするものです。「私が何かしたのかと思った」などと口ばかりの人もいますが…。心当たりがない場合にも、相手に言い返したりできない自分の性格が悪いのか、なんでターゲットにされるのかと自分に何か原因があると探す必要はありません。恥じることもありません。いじめる人やハラスメントをする人は、いじめる人だから、ハラスメントをする人だからあなたが被害者になるのです。
誰の問題か
いじめやハラスメントをする相手側の問題だと判断することが必要です。心である脳が違うのかもしれません。相手の問題を自分の問題にするのではなく、相手の問題か、自分の問題かをきちんと分けて考えるようにすることです。内容にもよりますが、相手を許せないと思うなら許す必要はありませんが、相手の問題で起こったことに更に関わることで、あなたの人生の足を引っ張られるような更なる被害を受けることはないのではないでしょうか。人生のステージの段階が違う人と思った方がいいかもしれません。相手から離れて後になって思い返せば、どんなことが起こっていたかがわかるでしょう。
気をつけること
いじめやハラスメントを受けたら、我慢せずにまず加害者からできるだけ離れることです。
行政の相談機関など、話せる人に話して、助けを求めることが必要です。
目は口ほどにものを言います。目つきが嫌だと感じる、相手にどことなく不穏なものを感じたら要注意です。あの人にもよいところがあるなどと考えるのは危険です。
現代のニュースでは、とても人がやることとは思えないような報道があります。人は相手を自分と同じような人間だと考えがちですが、みんな同じではありません。人の世に、まるで人でない人が混じっているかのようなこともあると考えた方がよさそうです。自分をそしてたいせつな人を守ることが基本です。良い人とつき合うことに徹することです。仕事上でどうしても避けられない場合は、決して必要以上に近づかないことです。良好な関係を築こうと近づいて、相手の餌食になる必要はありません。社会常識の範囲内で、さらっと必要最低限の関わりにしておくことです。
人間関係は、あなたの人生にとても大きな影響を及ぼします。人柄のよい、よい人間関係を築けるような人と関わっていけるように、つき合う人をしっかりと選択したいものです。