前回は、境界線(以下バウンダリー)の基本となる「種まきと刈り取りの法則」をご紹介しました。
これから数回にわたって、更に法則について紹介します。
それらの法則は「人生を考える時の基礎となる原則」です。
今回は「責任」・「力」の法則についてです。
責任の法則
愛するとは、問題が起こった時に、お互いに相手になり代わって行動することではありません。
相手の立場にたって気持ちを汲むこと、例えば相手の気持ちを察したり、思いやったり、相手に寄り添うことはできても、相手の気持ちを感じることはできません。
相手に変わって考えること、相手に変わって行動することもできません。
起こった問題を乗り越えていくことは人が成熟する機会になります。相手になり代わって行動することは、相手の成熟を阻むことになってしまいます。それを邪魔しないことこそが、自分の責任であり、相手を愛することなのかもしれません。
バウンダリーが自分の責任の範囲を示すということには、相手の無責任な行動に制限をかける役目もあります。愛情をかけることが大前提にあってのことですが、相手の無責任な行動によって起こったことから相手を助け出すことは、一見愛情のようにみえますがそれは勘違いです。
助け出してしまうことが、相手に無責任な行動を繰り返させることになります。相手は限度がわからないまま、人生を破滅へと向かわせることになります。それは愛からはほど遠いことです。
力の法則
人はそれぞれに力を持った存在です。自分の持っている力を知り、その力を信じることはたいせつです。
バウンダリーは、あなたが何に対して力を持っているか、持っていないかを示します。
あなたのバウンダリーの内側にあるものには、あなたは力を持っていますが、バウンダリーの外側あるものには働きかけて影響を与えることはできますが、それをどうこうすることはできません。
健康であること
例えば、あなたの夫がアルコール依存症だったとしましょう。夫のアルコール依存症は、夫が乗り越えて治すことです。夫がアルコールを限度を越えて飲んでしまうことは悪いことだとわかっていながら、飲むことをやめられない自分であることを受け入れること、自分で助けを求めて医療機関にかかること、アルコール依存を克服すると決断すること、何故アルコール依存になったか背景を知ること、アルコール依存になった背景を癒すこと、これらは夫本人以外ができることではありません。あなたには夫のアルコール依存症を治すことはできません。
もし、あなたが夫に治ってほしいと躍起になって苦しんでいるとしたら、相手を変えようとして苦しんでいる不健全なあなたであることに気づきましょう。あなたにできることは、夫に良い影響を与えることです。夫の力を信じることがいちばんです。直接的なことでなくても、夫を応援するために家庭内の環境を整えるなどできることはたくさんあるはずです。あなたの今までとは違う夫への接し方に、今までの自分では通用しないと夫が気づいた時、あなたは夫に良い影響を与えたことになります。
変えられるのはバウンダリーの内側だけ、自分だけです。
変えられないのはバウンダリーの外側、相手です。
二ーバーの祈り
アメリカの神学者、ラインホールド・ニーバーの「平安の祈り」の一節を紹介します。
― ラインホールド・ニーバーの祈り ― (渡辺和子シスター訳)
「主よ、
変えられないものを受け入れる心の静けさと、
変えられるものを変える勇気と、
その両者を見分ける英知を
我に与え給え」
この祈りには、幸せになる知恵が込められています。
ひとりひとりが知恵ある人でありますように。
参考文献 「境界線」 ヘンリー・クラウド、ジョン・タウンゼント著
次回「境界線⑾」に続きます。