心の境界線(以下バウンダリー)は、自分のバウンダリーが侵害された時には押し返し、また相手のバウンダリーを侵害することがないように注意する必要があります。
自分のバウンダリーも相手のバウンダリーも尊重することがたいせつです。
バウンダリーの侵害には、「マイクロアグレッション」と「マクロアグレッション」があります。
マイクロアグレッション
「マイクロアグレッション」とは、本来人種・LGBTQI+などへの偏見や差別発言を指します。偏見や差別発言は人の根幹にかかわることで、侵害されると深く傷つきます。また「マイクロアグレッション」は、日常のあらゆる場面で深い関係ではない人たちとの間で起こるバウンダリーの侵害を指します。一時的であり意識されないことが多いので、大した影響を受けないものと思われがちですが、同じ人との間で繰り返されてしまう場合はよくない影響を大きく受けることがあります。
「マイクロアグレッション」の例として
・黒人男性とエレベーターで一緒になると、一瞬身構えてしまう。
・カミングアウトしたら「あなたがゲイだとは気づかなかった」などと言われる。
・電車の中で隣り合わせただけの知らない人に、一方的に延々と話しかけられる。
・買い物をした時、店員さんにぞんざいな扱いを受ける。
・パートナーに言葉遣いを指摘され、何度も言い直しをさせられる。
・役職にあり、男性であればリーダーシップがあるといわれるような場面でも
「女のくせに生意気な」と言われることがある。
・人を見かけで判断する。
などです。
「マイクロアグレッション」で意識して気をつけることには、「話題の共有」と「罪悪感」に関することがあります。
話題の共有
「話題の共有」には、個人の持っている他人のプライベートな情報を相手に話すことが含まれます。親密な間柄ではどうしても起きてしまうのかもしれません。
その話題が相手や周りの人に与える影響を意識しにくいことがあり、知らず知らずのうちにバウンダリーの侵害が起きています。
例えば
・友人たちとの集まりで、ある人が席を立っている間にその人の悪口を言う。
・プライベートな話を本人の了解もなしにいないところで話してしまう。
などです。
話題を共有する時には場所を選び、個人を特定できない形で話すなどの配慮と、聞く側が話題を共有することを嫌がっていないかの確認も必要です。
情報をその場にいる人達で共有しておいた方がいい場合もありますが、必要かどうかはよく考えてから話す方がいいでしょう。
罪悪感
「罪悪感」については、
一方的に相手が悪いと思うことも、いつも自分が悪いのではと思ってしまうことも、その根底には極端な思い込みがあります。
話しているとなんとなく居心地が悪くなる、後で振り返ってみてもすっきりしないといった時には、相手は意識的ではないにしても、あなたが罪悪感を感じたり、自己嫌悪に陥ったりという結果になっている場合があります。
例えば
・虐待など、傷つけるような親から離れると決断した時に「家族なのに縁を切るなんて、そこまでしなくても」と兄弟姉妹から言われる。
・職場の飲み会には参加しないと決めているのに、「断るのはあなたくらい。つき合い悪いね」と言われる。
・友人に今は結婚するより仕事のキャリアを積むことに励みたいと話すと、「何故なの?結婚しないの?」と言われる。
・人からの誘いを断ると、「何で来られないの?」としつこく理由を訊いてくる。
などです。
どうすればいい?
対策としては、
自分の意思でこうしようと決めたことを相手にはっきりとわかるように、きちんと伝えるしかありません。
伝えることに慣れていない場合は、アサーティブコミュニケーションを学ぶことをお勧めします。アサーティブなコミュニケーションは、自分と相手が対等に、それぞれの気持ちや意見を相手を尊重しながら誠実に伝えるコミュニケーション方法です。
お互いを尊重する
親しい間柄にこそ相手を尊重しているかを意識する必要があります。
例えば
親しいからといって、あなたの本心から出た言葉ではなくても、きつい言葉やぞんざいな口調や態度で接していませんか?
相手との会食中にひと言もなく、かかってきた仕事の電話で延々と話してしまったことはありませんか?
うわの空で相手の話をきちんと聞いていないことはありませんか?
親子・恋人・親友などたいせつな人にどんなふうに接しているかをふり返ってみて、どうでしょうか。
自分を尊重していますか?
たいせつな人を尊重していますか?
お互いに相手を尊重することはとてもたいせつなことです。
参考文献 ネドラ・グローバー・タワブ著 「心の境界線」
コロナの時に㉟ 「境界線(6)」に続く
次回は「マクロアグレッション」についてお話します。