コロナの時に㉛境界線(3)

心当たりはありませんか?

・自分のことより、他人の世話という状況になっている。

・実りの少ない方向へ努力をしていて、徒労に終わる。

・自分や家族のことで精一杯なのに、過剰に仕事を引き受けたり、

友達など周りの人の相談に乗ったり人の役に立とうと行動をしてしまう。

・ありのままの自分(あるがままの自分)でいられず、無理して相手に合わせてしまう。

・自分さえ頑張ればなんとかなると、相手に合わせて自分の予定を調整してでも

無理に頑張ってしまう。

もしも、あなたが上記のように一所懸命に頑張っているのに、

結果的にはうまくいかないというのは、

自分の人生の舵取りがうまくできずにいるということです。

そこから抜け出す方法のひとつに適切な心の境界線(以下バウンダリー)を引くというとても効果的な方法があります。適切なバウンダリーにはどんな働きがあるのでしょうか。

バウンダリーの働き

自分と相手とを区別する

   自分と相手とを区別する働き

自分と相手とを区別できることによって、自分と相手の価値観の違いを認め合い

尊重し合えます。意見が違ったとしても、話し合って相手と価値観をすり合わせる

ことができるのです。

一方で自分と相手の区別がないということは、自分と相手を同じものとみなして

相手の価値観を認めずに、自分の価値観を相手に押し付けてしまうといったこと

が起こります。

また自分という範囲がわかると、自分が責任を取る範囲と自由にできる範囲

はっきりし、伸び伸びとした安心感が得られます。

自分の限界を知る

 自分の限界を知る働き 

自分がするべきこと、そうでないこと、自分にできること、できないことを分別できます。

ひとりで何もかもできるような万能な人はおそらくいないのではないでしょうか。

私たちには日常的に負う責任や、自分にしか負うことができない責任を果たす必要が

ありますが、それは重荷とはいえない軽荷です。

それに対して、災難や災害などに遭った時には、ひとりでは負えないほどの重荷を

背負わざるを得ない時があります。

その時には人の助けを求め、お互いに助け合う必要があります。

重荷をひとりで背負うと潰れてしまいます。

 

日常の軽荷を重荷のように見せかけて努力をせず、自分で負う必要がないかのような

行動をするのは無責任であり、また重荷を軽荷のように行動しようとして、

助けを受け入れないのでは心と体に苦しみをもたらしてしまいます。

また助け合う時にも、自分にできることとできないことをしっかりと分別することが

たいせつです。

分別できないでいると、例えば泳げない人が溺れかけている人を助けようとする

ようなものです。両者とも溺れてしまいます。相手を助けることはできません。

自分を守ること

  必要なものを守り、良くないものを入れない働き

自分の心身をよい状態に保っておくためには、必要でないものを外側に出し、自分にとって良いものを内側に置いて、害となるものは外側から入ってこないようにする必要があります。適切なバウンダリーが引けていないと、必要でないものや害のあるものに「ノー」と言えず、自分を守ることができません。

 

例えば、成長過程での虐待などで、親(養育者)からの愛情が充分に得られなかった場合は、適切な境界線が引けずに良いものを外側に締め出し、心と体に限りない苦しみもたらす害を内側に抱えてしまうことになってしまいます。そして助けようとする人に心を閉ざし、遠ざけてしまいます。更にはバウンダリーを越えてくるような、人を粗末に扱うような人が近づいてきて、相手の意のままになってしまうこともあります。

人を成熟させる

   人を成熟させる働き

人は生まれる時に母体から分離されますが、心理的には母親と子どもの関係にはバウンダリーがない状態です。自我が芽生える2歳~3歳頃に最初につくられる母親(養育者)とのバウンダリーを軸とした、発達段階に応じたバウンダリーがあります。

 

適切なバウンダリーが引けていないと、自分と相手を明確に区別できず、視点が自分になり相手の視点を理解することができません。そもそも相手がどう思っているかという発想そのものがない状態です。バウンダリーが引けるようになると相手が視野に入り相手の理解につながり、そこから多角的な視点が得られます。

人生に大きく影響する人間関係がうまくいかない原因のほとんどが適切なバウンダリーが引けていないことにあると言われています。

 

頑張っているのに人との関係がうまくいかない、人に振り回されている気がする、と思う時にはバウンダリーを引きなおすことです。

次回ロジャーズのひとりごと「境界線⑷」に続く